2014年10月24日金曜日

大沢在昌「小説講座 売れる作家の全技術ーデビューだけで満足してはいけな い」

「もっとメタで物語のしくみを理解したい」
こないだはじめて小説を創作してみて、そう思ったので手にとった本。




 総論からいうと、「あ、これ2,3回読みなおすな」って満足度でした。
12人の作家志望者の習作を材料に、「新宿鮫」でヒットを続けるエンタメ作家、大沢在昌がアドバイスやテクニックを講義・実地解説する形式。
なので具体的、実践的。
小説家志望の方のみならずエンタメ・ミステリ系小説が好きな読者の人にも、より作品を俯瞰して楽しむ視点が備わる内容ですな。



気になったとこざくっと

・複数の登場人物を登場させるには?
短編でも長編でも他視点で小説を書くことは可能です。……緻密な設計図をつくりパズルのように視点を合わせていって最後に一つの大きな絵を作る。ちなみに宮部みゆきさんは設計図なしで書いてしまいますが。

宮部さんはミステリとか視点が入れ替わったり伏線が入れ子状態になってるものが多い印象なんだけど、あれ全部設計図なしってSUGEEE


・描写に困ったときの虎の巻「天・地・人・動・植」の5文字

小説に陰影とリアリティをつけるためのtipsですって。書く人に役立つのはもちろん、読むときここらへんも意識すると面白いかも。


・伏線の張り方
そもそも私は、ほとんどプロットを考えないで書き始める人間なので、伏線は無意識に散らばしていくんですね。使う伏線もあれば、使わない伏線もあって、使わない伏線というのは、それが「伏線」である限り、読者は気づかずスルーしてくれますし、いかにも伏線的に立っているけど伏線として機能していないと思ったらあとで削ればいい、そういうやり方をしています。

→私はいままで「伏線は回収されなければいけない」と思ってたんだけど(ことにミステリとか警察小説なら)、伏線出しまくって回収しなくてもいいんだ!と目から鱗。つーかプロットほとんど立てないで書き始めて整合性があってしかも面白いってすごい。
何度も書くけど村上春樹も川上弘美も「書いたらこうなった」って自動筆記型だと聞いたんだけど、才能ある作家ってもともと自動筆記型のほうが多いのかな。別の世界の生き物のようだ…。


・「ないもの」にする努力を
あるものをただ思いついて書くのではなくて、あるものにないものを足すことによって、これまでになかったものを作り出すというか、変な言い方だけど、もっと「ないもの」にしていく努力をしてほしい。
ありふれたテーマや舞台設定でも読者に魅力的に読ませるには、エッセンス的なアイデアだったり高い筆力が必要だろうなあと思う。
筆力/テーマ/アイデア、どこかで「ユニーク」を目指さなきゃいけないんだな、新しい作品を世にだすってそういうことなんだな、と。

・ほかにも
とにかく本を読め、自分の世界を広げろ
好きな作品を解体分析せよ
いい話にも「トゲ」が必要だ
何を読ませたいかを自覚する
読者はM、作者はS


などなど、たくさん。

「あーたしかに!読んでて焦れる焦れる!」「じんわりいい話よりもトゲのある話や人物のほう覚えてる!」など、自分が読者として物語を楽しんでいて思い当たることばかり。
今まで小説とか漫画とか読んでて、「おもしろい/つまらないんだけど、なぜそう感じるのかわからない」状態だったんだけど、この本を読んでその快・不快の理由が明らかになった。ちょっとスッキリした感じ。
大沢在昌先生も歯に衣着せずズバズバもの言ってて読んでて気持ちいいw
対話形式が多くてスラスラ読めた。



あえていうなら
12人の作家志望者を受講者として、彼らの課題作を実例に批評・助言している。
特に後半は各志望者への丁寧な個別つっこみなんだけど、いかんせん読み手は作品のあらすじだけをもとに作品内容と大沢先生の言ってることを符号させなきゃいけない。
前半読みやすかったぶんダレるっちゃダレるかも。
集中して読んでみれば「受講料無料でプロ作家がここまでアドバイスしてくれるって超贅沢~!」って実感できるんだけど。



物語をさらに楽しみたい人、作家の舞台裏や苦悩を垣間みたい人は手にとって損はないんじゃないかなと思います。高橋源一郎の講座の本もサジェストされたけどこっちはより観念的な内容みたい。
次読んでみようか迷い中。





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「技術」は教えることができても「才能」はそうはいかない - エキレビ!(1/3)


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